いったいなぜ?同じ場所で犬たちが謎の墜落死。犬の自殺スポット、スコットランド「オーヴァートン橋」
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 世の中には説明のしがたい不可解な現象がある。スコットランドのダンバートン近郊、ミルトン街にある築100年のオーヴァートン橋で、全く同じ場所から犬が吸い込まれるように飛び込んでいくのもその一例であろう。過去50年間でおよそ50匹の犬達がこの場所で謎の墜落死を遂げているという。その為ここは「犬の自殺スポット」して有名となった。


 オーヴァートン橋はカルビン主義者の貴族、オーヴァートンにより1895年に建造された。それはビクトリアン様式で高さ約15メートル、オーヴァートン川の上にかかっている。

 2005年にはたった6ヶ月間で5匹の犬たちが飛び降りた。この'犬の自殺スポット'は、その橋の右側、端から2番目の欄干付近にあり、気の毒な彼らを'死へのダイブ'へと導いた。そしてさらに奇妙なことに、ほぼ全ての事故がよく晴れた日に起きており、その犬達は決まってコリーやレトリーバー、そしてラブラドール・レトリーバーといった鼻の長い種類なのだという。

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 スコットランドの動物虐待防止会によると、そのシチュエーションは'悲痛な謎'だという。愛犬を亡くし、なぜ彼らがダイブしたかつきとめようとする飼い主達がたくさんいるという。

 1995年、飼い主のドナー・コッパーが、夫と息子のカラムと一緒に散歩している間に亡くなったコリー種のベンも、その橋で身を投げた犬達の中の一匹だ。なんの前触れもなく、ベンはただ欄干から飛び降り、約15メートル下の岩の上に落下した。ベンは脚と背中、そして顎を折る重傷で、獣医は彼がこれ以上痛みで苦しませる必要はないと判断した。"カラムは未だにベンのことをたずねます。息子は犬の死にとても心を痛めていて、'ベンの脚は天国で治ってる?'と知りたがります。"と愛犬の死から一年を経た彼女は語った。

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 ゴールデンレトリバーのヘンドリクスの場合もほぼ同様だったが運に恵まれた。"犬が突然飛んだ時、私はパートナー、そして子ども達と歩いていました。娘が叫び、私は犬が倒れている岸まで急いで駆け下りて、犬のヘンドリクスを抱えあげました。幸いにもヘンドリクスが着地したのが苔に覆われた柔らかい場所だったので、ほとんど無傷でした。私達はとても運が良かったんです。"飼い主のケネス・ミクルはそう語った。

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 オーヴァートン橋が犬達に与える奇妙な現象を説明するため、当然ながらいくつかの説が浮上した。1番有力な説は、その橋には霊が憑いているというものだ。1994年、地元で反キリスト教徒呼ばわりされていたケヴィン・モイという人物が、自分の息子である赤ん坊をその橋から放り投げ、その後同じ場所で自殺未遂をしたという。それ以来この橋には幽霊が出るようになったという都市伝説が存在する。

 また、ケルト人神話では、オーヴァートンは天国に最も近い場所(シンプレイス)と呼ばれる場所で、霊界に近いとされているからだ。と表されている。犬達は人間より敏感に霊気も感知しやすいと考えられているので、ここで何かを察知し、奇妙な行動を引き起こすのではないかというものだ。しかし謎は残る。

 橋が立てられてから50年間は、犬が自殺したという報告例は一切ないのだ。50年経って急にこの事例が多発したのだとしたら、天国に最も近い場所だからという仮説も疑問がのこる。

 犬は飼い主の気分を感知する能力がある。オーストリア人のルパート・シェルドレイク博士の有名な実験では、たとえ遠くからでも犬は飼い主のの思考や意図を嗅ぎ取ることができるとということが証明された。

 もしかすると犬は飼い主の自殺願望を感知し、自らが飼い主の代わりとなって飛び込んだのではないか?という説もなりたつ。確かにこの橋のあるダンバートン地域の経済状況は悪化しており、イギリスの中でも最も不景気な地域だという。ところが、調査をすすめると、オーヴァートン橋から飛び降りた犬の飼い主の中で自殺願望を持つ人は誰もいなかったことが明らかになった。そのためこの説は除外されることとなった。

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 犬の心理学者、デビッド・スタンドズ博士はそのミステリーの核心に迫るためにダンバートンに行き、ある連続実験を行った。まず最初に転落死からまぬがれた唯一の犬、19才のヘンドリックスと共に橋を往復した。ヘンドリックスは楽しそうに橋を渡っていたが、橋の最後にある問題の場所にたどり着くと、明らかに緊張し始め、何かがヘンドリックスの気を引きつけているように見えた。

 老齢となったヘンドリックは、今回は自ら飛び降りるような事はしなかったものの、 スタンズ博士はこの場所は犬にとって、好奇心を刺激し、何かを調べずにはいられない衝動に駆られてしまうのではないかと分析した。視覚、聴覚、または嗅覚のどれかが刺激されたに違いないと。ここから犬の目線で見えるものは花崗岩でできた欄干のみなので、視覚については除外された。聴覚と嗅覚のどちらがその要因かを決めるため、グラスゴーの音響会社の熟練者チームと動物の専門家であるデビッド・セクソンが招集された。

犬の自殺スポット、検証ドキュメンタリー映像


 調査では音響的に特別な異常は発見できなかったが、セクソンはあることに気づいた。その橋の真下にある藪の中にネズミやミンク、リス等を見つけた彼は、その動物達のどれかが発する臭いが犬の興味をひきつけたのでは?と考えたのだ。視覚・聴覚でないのなら、残りは嗅覚となる。

 そこでセクソンはその動物がどれなのかを決めるため、種類の違う犬10匹に対して、3種の動物の臭いを個別に嗅がせてみるという実験を行った。するとなんと、70%の犬がミンクの臭いに真っすぐ向かっていったのだ。

 ということで今のところ最も有力な説は、”ミンクが放つその強烈なカビくさい臭いが、よく晴れた日に乾燥することでさらに強くなり、犬達をいやおうなく引きつける”というものになった。しかしなぜ、スコットランドに2万6千余りある橋の中で、なぜこの特定の橋の下のミンクだけに突進したくなるのか?スタンズ博士はこう説明した。"犬の体高に合わせて屈むと、その橋の花崗岩のみでできた厚さ約46センチの壁が彼らの視界を邪魔して、全ての音を遮断することが分かります。その結果、嗅覚という一つの感覚だけが鋭くなり、それに神経が集中するのです。"